6.10.2007

Henry's Farm: Non-USDA Certified Organic


先日授業に来ていただいたスローフードシカゴの支部長の方と帰り際にお話をしていて、たまたま日本のキュウリの話になった。アメリカのキュウリはヘチマみたいに太くて皮が硬くて、日本のものと全然違う。カナダ産の種無しキュウリ(Canadian seedless cucumber)とかピクルス用のbaby cucumberなどは、普通のよりもまだ近いといえば近いけれど、やっぱり違う。私はキュウリにお味噌をつけてまるかじりするのが子供の頃から大好きなのだけれど、アメリカに来てからはああいうキュウリ自体がなかなか手に入らず、夏になるとあれが食べたいなあとよく思うという話をした。支部長の方は知り合いの農家に日本の野菜を作っている人がいるんだけれど、と話しかけたところで駐車場に着いたのでそのまま別れてしまった。

それきりになっていたのだが、覚えていてくださったのか、数日前にメールをくださった。その農家の方はHenry Brockmanさんといって、Evanstonの朝市(Farmer's Market)に毎週土曜日にお店を出しており、支部長さん自身もときどき手伝いに行っているのだそうだ。曰く、完全なオーガニックで、今まで知り合ってきたどんな農家よりもすばらしい農業をしており、何より一番大切なことに、彼の野菜はものすごく美味しいのだとのこと。

早速Henryさんのウェブサイトを見ていて、彼の育てている品種の多さ(例えばレタス一つとっても30種類以上ある)、そして日本野菜の多さにびっくりしてしまった。奥様が日本の方らしく、Henryさんご自身も日本に住んでいたことがあるそうだ。さらに彼のオーガニックに対する徹底ぶりと誇りにも驚いた。彼はオーガニックという言葉を単なる無農薬、有機栽培を超え、持続可能で生物多様性に基づいた農法ととらえている。1990年代から一貫して完全オーガニック農法でやってきたHenryさんは、ずっと認定機関による認証をうけてきた。その頃からまったく変わらない方法で生産しているにも関わらず、現在彼は公的なオーガニック認証を受けていない。

2002年のNational Organic Programの開始により、現在アメリカにおけるオーガニックの認証システムはUSDA(アメリカ農務省)が管轄している。それ以前まで様々な機関や団体によって行われていた認証を一元化したことにより、オーガニック表示に対するある程度の信頼性を保証できるようになった一方、その官僚的な認定基準に対する批判もある。特にWalmartのオーガニック製品展開の開始に見られるように、オーガニック市場の成長が著しい最近では大手食品・流通企業が参入し始め、それに伴いUSDAに基準を緩和するよう求める強力なロビー活動も問題となっている。HenryさんはこのようなUSDA認証の混乱と不徹底な基準への抗議の意味もこめて、認証申請をしていない。National Organic Programにより、USDAの認証を受けていない者が「オーガニック」と表示することは法的に禁じられている。そこで彼は "Non-USDA Certified Organic"(非・アメリカ農務省認定オーガニック)という、ひねりのきいた文句を掲げているわけだ。

Arlington Heightsのミツワ(元ヤオハン)より遥かに近く、しかもそんなにも安心で美味しい日本の野菜が手に入るとあらば、と早速土曜日に行ってみることにした。マーケットは7:30〜1:00とのことだったので、犬の散歩をして、朝食をとり、天気のいい湖岸沿いの道のドライブを楽しみながらのんびりエヴァンストンに着いたのは10:30頃だった。Henryさんのテントはすぐに見つかり、支部長さんもいらした。私たちを見てお、来たのという感じに軽く驚かれたあと、第一声は「遅い!」と。「大体売れちゃったよ。遠いのはわかるけれどこれからは7:00までに来ないとだめだ。」と言われてしまった。実際お目当てのシソと小松菜は売り切れており本当にがっかりした。水菜は最後の一把を買うことができた。他に色々残っている野菜から、Blushed Butter Cosという種類のレタス、日本のかぶ、わけぎ、ニラ、葉付きのニンニク、ほうれん草など買い物袋一杯買って、$19だった。高級オーガニックスーパー、Whole Foodsで買った場合の1/2から1/3くらいの値段である。

支部長さんに紹介していただいてHenryさんともお話をさせていただいた。最初英語だったがそのうちに彼の方から非常に流暢な日本語にかわり、あとはずっと日本語で。お子さんたちのためにご家庭では日本語しか話されないのだそうである。「いろいろあるよ。枝豆はもうすぐ。多分2、3週間後くらいから。」とのこと。とても素敵な方だった。隣にはお姉様がハーブとフルーツの、こちらも完全オーガニックのお店を出していたが、やはり完売で残念だった。帰り際支部長さんに、「シソが欲しければ7:00に来ること」ともう一度念を押された。

というわけで週末かけて野菜を沢山食べたのだけれども、誇張なく、ここまで違うものかとたまげてしまった。スーパーのオーガニック野菜とはレベルが全く違う。まず洗っていて気付くのがそのイキの良さ。葉っぱがシャンとして張りがあり、野性的な色合いの美しさがある。大きな虫が出てきたことも付け加えておきたい。(そのあまりの元気のよさに潰してしまうのはしのびなく、外に放したら勢いよく飛んで行った。)そして味。濃く、豊かで、香りがあり、食べ終わってから数時間経っても口の中にその味わいが残っているような気さえする。何より感動したのが、写真のほうれん草。なんと根元が赤いのだ。こちらに来てから根元の赤いほうれん草を見た記憶があまりない。その味といったら、絶品、という以外言葉が見つからない。正直、支部長さんに言われたときはそんなの無理と思っていたのだが、この味を知ってしまった今はなんとしても7:00に行ってシソを手に入れねばという気持ちである。

色々いただいてotoが言ったことは、「野菜もお刺身と同じだ」。本当にそうだと思う。