4.10.2008

Hans Haacke, Dog and Pony Show


7日、Hans Haacke(ハンス・ハーケ)のプレゼンテーション、"Dog and Pony Show"を見てきた。dog and pony showとは手の込んだプレゼンテーション、通常は新製品の発表会という意味だが、オクスフォード辞典によるともともとは犬や子馬などを連れてまわる小規模なサーカスのことで、それからつまらない見せ物という意味だったとのこと。Haackeのプレゼンテーションはスライドを見せながら語る形式の非常にシンプルなものだったが、その内容はけっして「つまらない見せ物」ではなかった。彼のこれまでの作品をスライドで見せ、どういうきっかけや意図でそれらを制作したか、どのような反応があったか、それからまた彼が何を考えたかなどを語ってくれた。質疑応答含めて約2時間。Haackeが初めての作品と位置づける写真作品"Documenta Cleaners"は彼がアシスタントとして働いていた、現代美術の大型展覧会であるDocumenta(ドクメンタ)の舞台裏で掃除をする人々を撮ったものである。それから始まり"Wide White Flow"(広く白い流れ), "Trickle Up"(トリクル・アップ—富める者が富めば貧しい者にも富が滴り落ちるというトリクル・ダウン理論の逆、貧しい者から絞り上げて富者がますます富んでいく), "Mission Accomplished "(任務完了), "Commemorative Poster Project"(追悼のためのポスタープロジェクト), "Germania"(ゲルマニア)など、代表的な作品を追いながら、その時々の社会背景や問題とそれに対するHaackeの関心と表現を見ていった。特に印象に残ったのは "DER BEVÖLKERUNG (To the Population)"(居住民へについて。ドイツ連邦議会議事堂に設置するための作品を依頼されたHaackeが提案したのは真ん中に"DER BEVÖLKERUNG"という白い文字を浮かび上がらせた巨大な長方形の花壇。この花壇は初め空っぽだが後に議員たちがそれぞれの出身地の土を運び入れていく。Der Bevölkerungという文字には、連邦議会議事堂正面に掲げられた"Dem Deutschen Volke" (ドイツ民族へ)に対するHaackeの批判が込められている。「ドイツ民族」という言葉の持つ純血主義的、排他的な響きに対して、移民、マイノリティ、すべてを含むよりニュートラルな「居住民」という言葉こそ連邦議会議事堂に掲げられるのにふさわしい。この提案を巡っては大変な議論になり、結局は保守派の反対にもかかわらず可決され、2000年に議事堂中庭に完成した。その議論の過程や、完成してからまるで甲子園球児のように布袋に土を入れて持ってきた議員たちの様子なども大変興味深かった。そしてHaackeの予想した通り、土にはさまざまな植物の種や虫などがやはり混じっており、花壇はたちまちさまざまな動植物で一杯になった。いまも育ち続けるこの花壇の様子はここから見る事ができる。