アイアンシェフ:料理の鉄人復活に思うこと

かつて一世を風靡した「料理の鉄人」が13年ぶりに「アイアンシェフ」として復活したということを聞き、早送りながらざっと視聴してみた。繰り広げられるハイ・キュイジーヌの世界、確かに美味しそうだし圧倒される。しかし、これを今、フクシマ以後にやることの意味は一体何なのかと考えてしまった。例えば食材は放射能汚染検査されているのだろうか。仮に検査済みだとして「不検出」のみを使っているのか。これから続いていくにあたって、かつては紛うことなき最高級食材であった「福島の桃」がもし取り上げられるとしたら。キノコ、海藻、魚介類、栗、など放射能汚染の影響を特に受けやすいことが分かってきた食材であったら。

もはやこのような最高級食材、最高級料理を楽しめる人など、ただでさえ下り坂の経済情勢に震災によって追い打ちをかけられた日本にどれだけいるのだろう。毎日のテーブルが放射能におかされているかもしれないという不安の中、もやは現実には「美味しいもの」をめぐってお祭り騒ぎなどできないから、せめてテレビの中で夢をみるということなのだろうか。

 友人に、料理の鉄人が海外に広く輸出されたコンテンツであることを考えれば、この時期の復活は日本の食の安全性を暗に国内外にむけてアピールするためのものではないかと指摘されはっとした。3・11後、2011年7月から突如始まった感のいなめない農水省による「日本食文化の世界遺産登録」に向けたプロジェクトも思い起される。世界遺産登録検討会には「食育」に関わるメンバーも多く入っている。「食育」がすすめる「地産地消」によって、福島県の学校給食は福島県産のものを使うという方針が示され、食品の汚染を心配する保護者を中心に反対運動も起きている。つい最近(になってやっと)いわき市ではこの方針を凍結したというニュースもあった。

広告代理店を通じた後押しがあったのか、あるいは偶然なのか。いずれにしてもこの時期の「料理の鉄人」復活には複雑な思いがぬぐえない。